自動車メーカーのスズキで始業前の体操や朝礼の時間に対し、賃金が払われていなかったことが問題になっています。
最近では始業時間前に朝礼や体操をする企業は減りましたが、昔はよくありましたからね。
その名残なのかなあと思います。
そこで、残業ではなく「始業時間前」に焦点をあてて、この問題を考えてみることにします。
「早出」も時間外労働になります!
これは私の経験なのですが、始業時刻の前に出勤して仕事をしていた場合、時間外労働としてカウントされていました。
そもそも、「時間外労働」は「残業」だけを指すわけではなく、「決められた就業時間をオーバーしている分」を指しています。
なので、当然朝早く出社して何かする場合は、時間外労働になるわけです。
まずこの前提をはっきり認識しておく必要があります。
5分程度でも未払いの対象になるのか?
非常に難しいところですが、たった5分でも「毎日」「強制的に」参加が義務付けられているものは賃金の支払い対象とすべきです。
朝礼も体操も、内容に例外はありません。掃除でもです。
本人が自発的に行っていたのならまだしも、「規則に定められていなくても実質的に強制参加」だったのなら、支払い対象でしょうね。
よく経営側が使う言い訳として「規則に定められておらず任意だった」というものがあります。
これをそのまま鵜呑みにするほど、労働基準監督署は愚かじゃないですから。
実際のところどうだったか?が重視されるので、スズキの場合は当然賃金の支払い対象にカウントされます。
違法性があるか?と言われれば微妙なところ
厚生労働省では、労働時間について「使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」
としています。つまり体操や掃除や朝礼であっても、半強制的かつ定例化していれば、労働時間として賃金を支払うべきということです。
しかし、実際に始業5分前の時間が「使用者の指揮命令下にあるか」と言われれば非常に微妙なところです。
指揮命令も何も、使用する側も会社に到着したばかりでドタバタしていたりしますから。
労働者は何となく毎日の習慣で、朝礼や体操なんかをするわけですよね。
始業時間前の出社自体が違法というわけではなく、そこに時間外の割増賃金を支払わないことが問題ですからね。
塵も積もれば山となる、でたった5分でも年間240日で1200分。20時間です。
時給2000円換算なら大体5万円前後の金額になりますから。
無視できるかといわれれば、無視できませんよね。少なくとも私は無理です…。
基本的に定例化される作業は全て「労働」としてカウントすべき
例え仕事の本筋から離れた作業であっても、会社で実質上強制化されているものは労働としてカウントすべきでしょう。
これは労働者側の意識の問題でもあります。
「体操や掃除だから給料がでなくて当たり前」という考え方はもう古いです。
なあなあでこういった考えが広まった結果が、今回のスズキのように大きなニュースになりますから。
会社としてはイメージダウンが物凄いはずですよ。
気持ちよく働くためには、外部から(労基などから)指摘が入る前に、労使間で「労働時間」の意識を統一しておく必要がありそうですね。
労基、しっかり見張っててね。